小説「新・人間革命」 勝ち鬨 二十三 2018年1月5日

十一月十四日の夜、山本伸一は、二十数回にわたる推敲の末に、宣言するように、青年たちに語った。
「よし、これでいこう! 『紅の歌』の完成だ! 青年の魂の歌だ!」
    
一、ああ紅の 朝明けて
   魁光りぬ 丈夫は
   ああ暁鐘を 打て 鳴らせ
   驕れる波浪よ なにかせむ
   邪悪の徒には 栄えなし
   地涌の正義に 民衆の旗
    
二、毀誉褒貶の 人降し
   輝く王道 この坂を
   父の滸集いし 吾らあり
   子よ大樹と 仰ぎ見む
   ああ青春の 金の汗
   誓いの青藍 虹かかれ
    
三、老いたる母の 築きたる
   広布の城をいざ 護り抜け
   眩き地平に 澎湃と
   若き翼よ 爽やかに
   万葉の詩 ともどもに
   舞いに舞い征け 世紀まで
    
妻の峯子が、伸一に言った。
「ここには、あなたが青年におっしゃりたいことが、すべて入っていますね」
「そうなんだよ。男子部は、この『紅の歌』を、そして、女子部は、新愛唱歌の『緑のあの道』を歌いながら、二十一世紀をめざして進んでいくんだ」
「緑のあの道」は、女子部結成三十周年を記念して、八日前に発表された愛唱歌である。
伸一も、女子部から強い要請を受け、歌詞に手を加え、曲についてもアドバイスした。
「緑」とは、みずみずしい生命が放つ、青春の光彩である。
ダンテは、「青春」について、「わたし達の善き生涯に入るところの門と道とである」(注)と述べている。
 
小説『新・人間革命』の 引用文献
注 『ダンテ全集第六巻 饗宴・下巻』中山昌樹訳、新生堂