小説「新・人間革命」 勝ち鬨 二十八 2018年1月11日

山本伸一は、別府文化会館の玄関周辺にいた人たちに語りかけた。
「さあ、写真を撮りましょう! 別府の新出発の記念です」
彼は、カメラに納まったあと、広間で皆と一緒に勤行した。
「別府の同志の勝利を御本尊に報告するとともに、皆さんの永遠の幸せを願っての勤行です!」
誰もが歓喜に胸を躍らせ、声を弾ませて、祈りを捧げた。同志は、悪侶の仕打ちに耐えながら、この瞬間を待ち続けてきたのだ。
勤行を終えると、彼はマイクに向かった。
「長い間、皆さんには、苦しい思いをさせてしまい、まことに申し訳ありません。
本来、仏子を最も大切にするのが僧侶の道であるはずです。
ところが、悪僧たちは、広宣流布に走り抜いてきた同志を苦しめ続けてきた。とんでもないことです。
しかし、最も苦しみ、戦い抜いた人が、いちばん幸福になれると教えているのが仏法です。
皆さんは、こうして障魔を打ち破り、堂々と勝利したんですから、功徳爛漫の人生が開かれていくことは間違いない。いよいよ春が来たんです。
どうか不幸に泣く人びとを救いながら、最高の人生を生きてください」
わずかな時間であったが、伸一は思いの限りを注いで、皆を励ました。そして、大分市内にある大分平和会館へ向かった。
午後六時過ぎ、会館に到着した彼は、玄関に居合わせたメンバーとカメラに納まった。皆、晴れやかな笑みである。
会館には、県の各部代表ら四百人が集っていた。伸一が広間に姿を現すと、大拍手と歓声が沸き起こった。
広間には、「大分家族に春が来た!」の横幕が掲げられていた。そこには、皆の思いが表現されていたのである。
伸一は、力のこもった声で話し始めた。
「皆さんは勝ちました。長い呻吟の歳月を経て、師子身中の虫を打ち破り、遂に正義が悪を打ち破ったんです!」