小説「新・人間革命」 勝ち鬨 三十七 2018年1月22日

山本伸一は、詩のなかで、「民衆と共に歩みゆくことを絶対に忘れてはならない」と、創価の不変の軌道を示し、いかなる権威、権力をもって迫害されても、その大難を乗り越えていくところに、人間革命の勝利の旗は翻ると断言した。
さらに、「二〇〇一年五月三日」を目標に、広布第二幕の勝負は、この時で決せられることを銘記して、労苦の修行に励みゆくよう訴えたのである。
口述を一言も漏らすまいと書き取る不二の青年たちとの、真剣勝負の作業であった。
伸一は、午後四時から、代表メンバーと懇談会を行うことになっていた。
「この続きは、帰って来てからやろう!」
彼は、急いで会場へ向かった。
青年たちは、詩の清書を始めた。
伸一は五時半に戻ると、すぐに推敲に入り、再び口述が始まった。
新しい言葉が、次々と紡ぎ出される。時には、清書した十三行罫紙の半分余りを書き換えることもあった。余白がびっしりと文字で埋まり、用紙の裏にも、筆記しなければならなかった。
この詩を発表する大分県青年部幹部会の開始時刻が刻々と迫ってくる。
午後六時過ぎ、幹部会の会場では開会が宣言され、「紅の歌」の合唱が始まり、青年部の県幹部や、東京から派遣された女子部副書記長や学生部長のあいさつと進んでいった。
ようやく、直しの口述が終わったのは、副会長のあいさつに入った時であった。
「これでよし! さあ、行くぞ! 清書ができたら、持っていらっしゃい」
会場では、副会長の話も終わった。間もなく午後七時になろうとしていた。
その時、伸一が姿を現した。
大歓声と大拍手が沸き起こった。
悪僧の迫害と戦い勝った凜々しき丈夫の男子部と、決して挫けなかった、清らかにして信強き女子部の凱歌の出発である。
苦労し抜いて戦い、勝利の道を開いた勇者の表情は晴れやかであった。
広宣流布の敢闘あるところに、大歓喜の泉は湧く。