小説「新・人間革命」 勝ち鬨 三十八 2018年1月23日

大分県青年部幹部会で山本伸一は、共に勤行し、正義を守り抜いた青年同志のますますの成長と幸福を祈念した。
別室では、まだ詩の清書が続いていた。ペンを手にしていた青年の一人が言った。
「もう時間がない。発表できなくなってしまう。清書は終わっていないが、ともかくお届けしよう」
彼らは、会場に駆け込んだ。
マイクに向かった伸一は、御本尊を受持した人生の尊さを述べ、信心には、「邪信」「狂信」と「正信」があることを述べた。
学会を利用して名聞名利を得ようとする信心は「邪信」であり、道理、良識、社会性を無視した信心は「狂信」である。
そして、どこまでも良識をもち、信・行・学の着実な実践を根本として広宣流布に生き、社会、仕事、生活のうえで、信仰の勝利の実証を示していくなかにこそ、「正信」があることを訴えた。
また、青年時代の生き方にも言及した。
「青年とは、悩み多き年代であり、行き詰まり、スランプがあるのは当然です。
そうした時にこそ、現実から目を背けるのではなく、信心で事態を切り開こう。
唱題で乗り越えていこうと決めて、御本尊に向かっていくことです。
その挑戦のなかに、宿命の打開も、人間革命もある。
その労苦こそが、青春時代の得がたい財宝となります」
青春の苦闘という開墾作業がなければ、自身の成長も、人生の開花もあり得ず、総仕上げとなる実りの秋を迎えることもない。
ドイツの詩人ヘルダーリンは詩う。
「あらゆる喜びは苦難から生れる。
 そしてただ苦痛のなかにのみ
 わたしの心をよろこばす最善のもの、
 人間性のやさしさは、育つのだ」(注)
 伸一の話は、結びに入った。
「二十一世紀の未来は、すべて現在の青年部諸君に託したい。黄金のごとき青年時代を学会とともに生き抜き、人生を見事に荘厳していっていただきたい。
創価の大道に勝る人生勝利の道はないと、断言しておきます」
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 ヘルダーリン著「運命」(『世界名詩集大成6 ドイツ篇I』所収)手塚富雄訳、平凡社