小説「新・人間革命」 勝ち鬨 三十九 2018年1月24日

山本伸一は、指導の最後に、こう告げた。
「私は、二十一世紀へと向かう新しい指針にしてほしいとの思いで、詩を作りました。
さきほど、口述し終えたばかりです。これから、発表してもらいます」
直前まで清書していた大分出身の副男子部長・村田康治が立って、詩を読み始めた。
「『なぜ山に登るのか』『そこに山があるからだ』と、かつて、ある著名な登山家は言った……」
一瞬、村田の脳裏に、伸一が、青年たちのために!と、一言一言、生命を吹き込むように口述し、推敲に推敲を重ねていた姿が浮かんだ。
その師の心に胸を熱く
しながら、彼は朗読を続けた。
「我が門下の青年よ、生きて生きて生き抜くのだ。絶対不滅にして永遠の大法のために。また、この世に生を受けた尊き自己自身の使命のために」
一語一語に力を込めて、読み進んでいく。
「来るべき時代は、かかる若きリーダーを望み待っていることを私は知っている。
信仰と哲学なき人は、羅針盤のなき船舶のようなものだ。もはや、物の時代から心の時代、心の時代から生命の時代に刻々と移り……」
清書が終わっていないため、後半部分になると、びっしりと書き込みがなされたままの原稿を読み上げることになった。
村田は、読み間違えないように、細心の注意を払いながら、朗読していった。
「若き君達よ、朝な夕なに大衆と常に接し、共に生き、大衆と温かき連係をとりながら、そして大衆と呼吸し、共鳴してゆく若き新世紀のリーダーになっていただきたいのだ。
私は君達を信ずる。君達に期待する。君達を愛する」
青年たちは、感無量の面持ちで真剣に耳を澄ましていた。
伸一は、その参加者に、じっと視線を注ぎながら、心で叫んでいた。
今、この大分の地から、新世紀への前進の幕が切って落とされたのだ。
不撓不屈の創価の新しき歴史が、ここから始まったのだ