小説「新・人間革命」 勝ち鬨 五十 2018年2月7日

山本伸一は、言葉をついだ。
「人生という空路を飛んだ飛行機は、やがて着陸の時を迎える。飛行機は着陸が最も難しいともいわれている。
いわば、人生でいえば、総仕上げの年代であり、まさに一生成仏への滑走路に入れるかどうかです。
この総仕上げの時を、いかに生きて、わが人生を荘厳していくかが、最も大事なんです。
どうか皆さんは、年はとっても、心は青年の気概で、広宣流布のため、人びとの幸せのために、完全燃焼の日々を送っていただきたい。
生涯求道、生涯挑戦、生涯青年です」
彼は、こう話を結んだ。
「飾られていた白菊の花も、会場入り口の花も、窓際の花も、すべてに皆様の真心が染み渡っている。
その労作業に感謝と賛嘆の思いを託して拍手を送りたい。
可能ならば、お正月までこのままにして、来館される方を楽しませていただければ幸いです」
伸一は、この日、和歌を認めて贈った。
 
 熊本県の女子部には──  「白菊の その名の如き 乙女等が 茜の夕日に 瞳ひかりぬ」
 大分県竹田の同志には──  「月光の 曲の聞ゆる 城趾に 竹田の友の 笑顔嬉しや」
      
伸一の一行が阿蘇の白菊講堂を発って、熊本市にある熊本文化会館に到着したのは、午後六時前であった。休む間もなく県幹部らとの懇談会が待っていた。
終了後、彼は、県長たちに言った。
「私が激励に訪れた方がよいお宅や、お店があったら、どんどん言いなさい。
一軒でも、一人でも多くの同志とお会いしておきたい。
大きな飛躍を遂げていくには、一人ひとりの同志にお目にかかり、悩みや疑問に耳を傾け、心から納得するまで対話することが肝要なんです。
そして、信心への確信をもって、同志の生命を触発するんです。個人指導とは、人間を根底から蘇生させる真剣勝負の対話なんです」