小説「新・人間革命」 勝ち鬨 五十二 2018年2月9日

ここで山本伸一は、今回の宗門事件のなかで、学会の組織を攪乱するなどした幹部がいたことから、その共通性に言及していった。
「これまで、私の側近であるとか、特別な弟子であるなどと吹聴し、皆に迷惑をかけた幹部が一部におりました。
結局、私を利用して自分の虚像をつくり、同志を騙す手段にしてきたんです。
私は、日々、さまざまな会員の方々と接しておりますが、皆、平等に、指導・激励にあたってきたつもりです。
信心のうえで特別なつながりなどというものはありません。
強いて言えば、私の身近にいて、すべてを託してきたのは、十条前会長であり、秋月現会長です。
したがって、自分は側近である。特別な関係にある──などという言葉に騙されないでいただきたい。
そんな発言をすること自体、おかしな魂胆であると見破っていただきたい。
どこまでも、会長を中心に力を合わせていくことが、広宣流布を推進していくうえでの団結の基本です。未来のためにも、あえて申し上げておきます」
さらに伸一は、「甲斐無き者なれども・たすくる者強ければたうれず、すこし健の者も独なれば悪しきみちには・たうれぬ」(御書一四六八ページ)などの御文を拝して指導した。
「信心を全うしていくうえで、大事なのは善知識であり、よき同志の存在です。
不甲斐ない者であっても、助ける人が強ければ倒れない。
反対に、少しばかり強くとも一人であれば、悪路では倒れてしまう。
どうか、同志の強い励ましの絆で、一人も漏れなく、広宣流布の二十一世紀の山を登攀していっていただきたいことをお願い申し上げ、私のあいさつとさせていただきます」
県幹部会を終えた伸一は、熊本文化会館内にある「聖教新聞」熊本支局の編集室を訪れた。
翌日付の、岡城址での記念撮影が載った新聞の早版を、見ておきたかったのである。
彼は、竹田から阿蘇に向かうバスのなかで、できる限り大きく写真を掲載してあげてほしいと、担当の記者に頼んでいたのだ。