小説「新・人間革命」 勝ち鬨 六十二  2018年2月21日

山本伸一は、創価高校のサッカー部員と共に記念のカメラに納まった。
全国選手権大会に出場するのは、初めてのことである。
伸一は、選手たちに声をかけた。
「いつも通りに、伸び伸びとね」
メンバーは、肩に余計な力が入っていたのが、すっと抜けるような気がした。
彼は、周りにいた人たちに言った。
「負けた時には、明るく笑って、励ましてあげてください。
勝った時には、泣いてあげてください」
翌二日、創価高校は一回戦を迎えた。
対戦相手は、大分代表の高校である。
この日は、伸一の五十四歳の誕生日であった。
選手たちは、「初戦の勝利をもって、創立者の誕生日をお祝いしよう」と誓い合った。
皆、普段以上に力を発揮できた。
また、見事な連係プレーが随所に見られた。
ゴールキーパーの選手は、年末の練習試合で左膝内側の靱帯を損傷したが、テープを巻いて出場し、鼻血を出しながらもゴールを守り抜いた。
しかし、容易に決着はつかず、試合は0対0のまま、PK戦となった。
そして、シュートが決まり、創価高校が勝利したのだ。
"負けじ魂"が光る勝負であった。
この試合は、テレビ中継されており、学園寮歌「草木は萌ゆる」(後の創価中学・高校の校歌)の歌声が流れ、胸を張って熱唱する選手たちの凜々しい表情が放映された。
四日には、二回戦に臨み、北海道代表と対戦した。
接戦の末に0対1で惜敗したが、初出場ながら、いかんなく敢闘精神を発揮した試合となった。
対戦した北海道代表のフォワードは高等部員であった。
彼は、試合終了後、創価高校の監督のもとへ駆け寄り、「ありがとうございました!」と一礼し、自己紹介した。二人が固い握手を交わすと、拍手が起こった。
「これから創価高校の分まで頑張ります」と語る、
彼の姿がさわやかであった。
もう一つの青春のドラマであった。