小説「新・人間革命」  勝ち鬨 六十四 2018年2月23日

山本伸一は、目黒平和会館での懇談会で、参加者の報告に耳を傾けた。
目黒の同志は、傲慢で冷酷な正信会僧らの攻撃によって、さんざん苦しめられてきた。
それは、まさしく、学会の発展を妬んだ、広布破壊の悪行であった。
伸一は、目黒の幹部に語った。
「今こそ、本気になって戦いを起こす時です。行動です。
どんな困難な状況にあっても、行動から新しい局面が開かれていきます」
静かな口調であったが、力のこもった声であった。
「皆の、なかでもリーダーの一念が変われば、いかに最悪な事態であっても、必ず道を切り開いていくことができます」
このあと、伸一は、自由勤行会を行い、集って来た同志を全力で励ました。
「正しい信心とは何か──それは、生涯、何があっても御本尊を信じ抜いていくことです。
また、正邪、善悪に迷っている人には、真実を言い切っていくことが大事です。
それには勇気が必要です。
目黒の皆さんは、見栄や体裁にとらわれるのではなく、勇気をもって仏法対話のうねりを起こしてください」
──「人生が私たちに要求するのは勇気である」(注)とは、ブラジルの文豪ジョアン・ギマランエス・ローザの言葉である。
翌日、伸一は秋田指導に出発することになっていた。
準備もあったが、時間の許す限り激励を続けた。
東京で最も苦しみながら、創価の正義の道を歩み通した目黒の同志に、勝利の突破口を開いてほしかったのである。
この夜、伸一は、日記に記した。
「僧の悪逆には、皆が血の涙を流す。此の世にあるまじきこと也。
多くの苦しんでいった友を思うと、紅涙したたる思いあり。
御仏智と信心は必ず証明される」
仏法は勝負なれば、われらは必ず勝って、創価の正義を宣揚しなければならない。
目黒の法友は、この年、「弘教千百十五世帯」という全国一の見事な発展をなし遂げていくのである。
 
小説『新・人間革命』の引用文献
注 ローザ著「大いなる奥地」(『世界文学大系83』所収)、中川敏訳、筑摩書房