小説「新・人間革命」  勝ち鬨 六十六 2018年2月26日

ゴムの長靴にズボンの裾を押し込んだ中綿コートの壮年や、ブーツに毛糸の帽子を被った婦人、日曜日ということもあり、親と一緒に来た、?を赤くしている子どももいた。
山本伸一は、雪に足を取られないように注意しながら、大きく手をあげ、笑顔で皆を包み込むように、歩みを運んだ。
 「皆さん、ありがとう! お元気ですか?
ご苦労をおかけしています。これからも私は、皆さんを守っていきます。
全員、長生きして、幸せになってください。今日から新しい出発です。
頑張ろうではないですか!」
子どもの頭をなで、壮年たちと握手を交わしていく。
仕事のことや健康状態などを報告する人もいる。"街頭座談会"であった。
そして、一緒に記念のカメラに納まった。
 車が走りだして、しばらくすると、道路脇に立つ数人の人影があった。
また車を止めてもらい、降りて励ましの言葉をかけ、一緒に写真を撮る。「聖教新聞」のカメラマンは、無我夢中でシャッターを切り続けた。
それが何度か続き、牛島西二丁目の四つ角に近付くと、通り過ぎる車を見詰めている、七、八十人の一団がいた。
行事の成功と晴天を祈って唱題していたメンバーであった。
「きっと先生は、この道を通るにちがいない。表に出て歓迎しよう」ということになり、待っていたのだ。
伸一は、すぐに車を降りた。皆、驚いて、喜びを満面に浮かべた。
「皆さんにお会いしに来ました! 今日の記念に写真を撮りましょう!
大変な、辛い思いをされた皆さんの勝利を祝福したいんです。
私の心には、いつも皆さんがいます。
題目を送っております。皆さんも、題目を送ってくださっている。
それが師弟の姿です。普段はお会いできなくとも、私たちの心はつながっています」
すると、一人の婦人が言った。
「先生! 私たちは大丈夫です。何を言われようが、信心への確信は揺らぎません。先生の弟子ですから。師子ですから!」