小説「新・人間革命」  勝ち鬨 六十七 2018年2月27日

車を走らせ、交差点から、ものの数百メートルも行くと、自動車工場の前にも、人が集まっていた。
山本伸一は、ここでも降りて、"街頭座談会"を始めた。
集っていた人のなかには、学会員に脱会を迫る寺側と懸命に戦い、同志を守り、励ましてきた地域のリーダーもいた。
伸一は、固い握手を交わしながら、その健闘を讃えた。
「皆さんが、同志を守ろうと、必死の攻防を展開されてきたことは、詳しく報告を受けております。
私と同じ気持ちで、私に代わって奮闘してくださる方々がおられるから、学会は強いんです。それが異体同心の姿です。
何かあった時に、付和雷同し、信心に疑いをいだき、学会を批判する人もいます。それでは、いつか大後悔します」
彼の脳裏に「開目抄」の一節が浮かんだ。
「我並びに我が弟子・諸難ありとも疑う心なくば自然に仏界にいたるべし、天の加護なき事を疑はざれ現世の安穏ならざる事をなげかざれ、我が弟子に朝夕教えしかども・疑いを・をこして皆すてけんつたな(拙)き者のならひは約束せし事を・まことの時はわするるなるべし」(御書二三四ページ)
伸一は、言葉をついだ。
「皆さんは負けなかった。"まことの時"に戦い抜き、勝ったんです。
その果敢な闘争は、広布史に燦然と輝きます」
 皆の顔に、晴れやかな笑みが広がった。
 伸一は、秋田文化会館に到着するまでに、九回、同志と激励の対話を続けたのである。
 副会長の青田進と一緒に、伸一の車に乗っていた東北長の山中暉男は、その行動を身近に見て、深く心に思った。
 "先生は、一人ひとりに師子の魂を注ごうと、真剣勝負で激励を続けられている。
これが先生の、学会の心なのだ。私も、同志を心から大切にして、励ましていこう!"
 精神の継承は、言葉だけでなされるものではない。
それは、行動を通して、教え、示してこそ、なされていくのである。