小説「新・人間革命」  勝ち鬨 六十九 2018年3月1日

秋田の同志は、今、正信会僧による"嵐の宗門事件"を勝ち越え、"歓喜の晴天"のなかで、山本伸一を迎えたのだ。
それだけに、「晴天広場」との命名を聞いた時、小松田俊久だけでなく、周囲にいた誰もが喜びを隠せなかったのである。
この日、夕刻からは、秋田市内で東北代表者会議が行われた。
その席で、大曲、能代などの寺院での、正信会僧による過酷で非道な学会員への仕打ちも、つぶさに報告された。
──ある寺では、法事を頼むと、来てほしいなら学会を辞めよと、ここぞとばかりに迫ってきた。
そんな恫喝に屈するわけにはいかなかった。
大ブロック長(後の地区部長)が導師になり、冷やかし半分でやってきた脱会者たちを尻目に、学会員は声を合わせて、堂々と、厳粛に読経・唱題し、法要を行った。
別の寺では、家族が他界し、悲しみと戦っている婦人が、坊主から、「学会なんかに入っているからだ」と、聖職者とは思えぬ暴言を浴びせられたこともあった。
代表者会議では、この両地域の同志を激励するために、派遣する幹部についても検討が行われた。
伸一は語った。
「これまでの皆さんのご苦労を思うと、胸が張り裂けんばかりです。よくぞ耐えてこられた。
広宣流布のために正義を貫かれた皆さんを、御本仏は大賛嘆されるでしょう。
ともあれリーダーは、皆を大きく包容し、守り抜いていただきたい。
その際、こまやかな心遣いが大切です。
人間は感情で左右されることが多いものであり、こちらの配慮を欠いた、些細な言葉遣いによって、相手を傷つけてしまうこともある。
しかし、信心の世界にあっては、不用意な言動や暴言で、同志を退転に追いやってしまうようなことは、絶対にあってはならない。仏を敬う思いで、同志と接していくことが基本です。
あくまでも一人ひとりを尊重し、良識豊かな、人格錬磨の世界こそが、わが創価学会であることを、深く自覚していただきたい」