小説「新・人間革命」 勝ち鬨 七十八 2018年3月12日

山本伸一は、十三日朝、秋田文化会館で役員らと共に勤行したあと、市内での協議会に出席し、正午過ぎ、記念撮影の会場となる、会館前の公園へ向かった。
そこには、午前中、二回にわたって行われた勤行会の参加者が、記念撮影のために喜々として集まっていた。
雪は降り続いていたが、皆、元気いっぱいであった。
思えば、この数年、秋田の同志は、歯ぎしりするような日々を過ごしてきた。
──悪僧たちは、葬儀の出席と引き換えに脱会を迫るというのが常套手段であった。
また、信心をしていない親戚縁者も参列している葬儀で、延々と学会への悪口、中傷を繰り返してきた。
揚げ句の果ては、「故人は成仏していない!」と非道な言葉を浴びせもした。
人間とは思えぬ、冷酷無残な、卑劣な仕打ちであった。
そうした圧迫に耐え、はねのけて、今、伸一と共に二十一世紀への旅立ちを迎える宝友の胸には、「遂に春が来た!」との喜びが、ふつふつと込み上げてくるのである。
伸一が、白いアノラックに身を包んで、雪の中に姿を現した。気温は氷点下二・二度である。集った約千五百人の同志から大歓声があがり、拍手が広がった。
彼は、準備されていた演台に上がり、マイクを手にした。
「雪のなか、大変にお疲れさまです!」
「大丈夫です!」──元気な声が返る。
「力強い、はつらつとした皆さんの姿こそ、あの『人間革命の歌』にある『吹雪に胸はり いざや征け』の心意気そのものです。
今日は、秋田の大勝利の宣言として、この『人間革命の歌』を大合唱しましょう!」
雪も溶かすかのような熱唱が響いた。
   
  君も立て 我も立つ
  広布の天地に 一人立て……
   
伸一も共に歌った。皆の心に闘魂が燃え盛った。創価の師弟の誇らかな凱歌であった。