小説「新・人間革命」  勝ち鬨 八十二 2018年3月16日

自由勤行会を終えた十三日夜、山本伸一は、秋田市内で行われた県青年部の最高会議に出席した。
翌日は、県青年部総会が予定されていた。彼は、若きリーダーたちの意見、要望を聞くことに、多くの時間をあてた。
地域広布の確かな流れを開くために、人材育成グループの充実なども話題にのぼった。
秋田で世界農村会議を開きたいとの意見も出た。
伸一は、「いいね」と言うと、笑顔で語り始めた。
「こういう発想が大事だよ。食糧問題は、世界にとって深刻な問題だ。
まさに農業に力を注ぐ東北の出番だ。東京など、大都市主導ではなく、農村から、地方から、人類の直面する重要課題の解決の方途を見いだして世界に発信していく──そこから、秋田の新しい
未来も開いていくことができる。
青年は、常に、『皆が、困っている問題は何か』『地域発展のために何が必要か』を考え、柔軟な発想で打開策を探っていくんです。
不可能だと思ってしまえば、何も変えることはできない。
必ず、なんとかしてみせると決めて、思索に思索を重ね、何度も何度も挑戦し、粘り強く試行錯誤を重ねていく情熱があってこそ、時代を変えることができる。これが青年の使命です」
彼は、未来を託す思いで話を続けた。
「東北や北海道は米の生産地として知られているが、昔は寒冷地での稲作は難しいとされてきた。
長い間、品種改良などを重ね、懸命に努力し抜いて"今"がある。
ドミニカのメンバーには、お米を使って、日本の『粟おこし』のようなお菓子を作ろうと工夫を重ね、成功した人もいます。
たとえば、秋田ならば、"この雪をどうするか"を考えることも大事だ。
これをうまく利用できれば、秋田は大きく変わるよ。
一つ一つのテーマに必死に挑んでいくことだ。真剣勝負からしか、未来の突破口は開けません」
"必ず、事態を打開していこう"と一念を定めるならば、自身の可能性は限りなく拡大していく。そして、新しき扉は開かれる。