小説「新・人間革命」  誓願 二十九 2018年4月28日


SGI会長の山本伸一の言葉に、ゴルバチョフ大統領もユーモアで返した。
「会長のご活動は、よく存じ上げていますが、こんなに情熱的な方だとは知りませんでした。
私も率直な対話が好きです。
会長とは、昔からの友人同士のような気がします。
以前から、よく知っている同士が、今日、やっと直接会って、初めての出会いを喜び合っている――そういう気持ちです」
伸一は、大きく頷きながら応えた。
「同感です。ただ大統領は世界が注目する指導者です。
人類の平和を根本的に考えておられる信念の政治家であり、魅力と誠実、みずみずしい情熱と知性をあわせもったリーダーです。
私は、民間人の立場です。そこで今日は、大統領のメッセージを待っている世界の人びとのため、また後世のために、私が生徒になって、いろいろお聞かせ願いたい」
大統領は、あのゴルビー・スマイルを浮かべて語った。
「お客様への歓迎の言葉を申し上げる前に先を越されてしまいました。生徒なんてとんでもないことです。
会長は、ヒューマニズムの価値観と理想を高く掲げて、人類に大きな貢献をしておられる。
私は深い敬意をいだいております。
会長の理念は、私にとって、大変に親密なものです。会長の哲学的側面に深い関心を寄せています。
ペレストロイカ(改革)の『新思考』も、会長の哲学の樹の一つの枝のようなものです」
伸一は、自分の思いを忌憚なく語った。
「私もペレストロイカと新思考の支持者です。私の考えと多大な共通性があります。
また、あるのが当然なんです。
私も大統領も、ともに『人間』を見つめているからです。
人間は人間です。共通なんです。私は哲人政治家の大統領に大きな期待を寄せています」
伸一は、二十五年前、「人間性社会主義」の理念を提唱したことがあった。
大統領は「人間の顔をした社会主義」をめざして改革の旗を掲げた。
人間という普遍の原点に立つ時、すべては融合し、結合することが可能となる。