2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

小説「新・人間革命」 人間教育39 4月1日

山本伸一は、本来、最も優先されるべきは「人間」であるにもかかわらず、戦前・戦中は「軍事」が、戦後は「経済」が優先されてきたことを指摘した。 そして、この順位を逆転させるには、教育という人間の育成作業から、突破口を開く以外にないと訴えた。 ま…

小説「新・人間革命」 人間教育38 3月31日

八月十二日、山本伸一の姿は、創価大学中央体育館の壇上にあった。教育部夏季講習会の全体指導会に出席したのである。 文化本部長の滝川安雄のあいさつに続いて、伸一が登壇した。 講習会には、北海道をはじめ、東日本の教育部の代表約二千人が集っていた。 …

小説「新・人間革命」 人間教育37 3月30日

“イネさん”から、「教育の心」を学んだ木藤優は、日々、クラスの児童のことを思い浮かべては、唱題に励んだ。 そして、次第に子どもたちと心が通い合うようになり、学校を抜け出す子どももいなくなった。クラスは目に見えて変わっていったのである。 山本伸…

小説「新・人間革命」 人間教育36 3月29日

入会した木藤優の面倒をみてくれたのは、紹介者である学友の母親“イネさん”であった。彼女は、平凡な主婦であったが、幾つもの病を乗り越えた体験をもち、限りなく明るく、仏法への確信に満ちあふれていた。 その“イネさん”が、木藤に、信心の基本から、根気…

小説「新・人間革命」 人間教育35 3月28日

木藤優は、やがて、“壁”に突き当たった。担任した五年生のクラスで、学校を抜け出す児童が、後を絶たないのだ。男子二十五人のうち、十五人ぐらいがいなくなってしまうこともあった。 捜しに行くと、近くの河原でたむろしていた。 また、シンナーを吸う子も…

小説「新・人間革命」 人間教育34 3月26日

教育部書記長の木藤優は、入会して十年になる、三十八歳の教員であった。 一九三七年(昭和十二年)に東京の馬込に生まれた彼は、幼少期に空襲の恐怖を味わい、八歳で終戦を迎えた。翌年、劣悪な食糧事情のなか、母親が病にかかり、他界した。そんな時代を生…

小説「新・人間革命」 人間教育33 3月25日

一九七五年(昭和五十年)の八月、山本伸一は、連日、各部の夏季講習会等に出席し、生命を振り絞る思いで指導を重ねていた。 十二日には、教育部のメンバーが参加し、創価大学で夏季講習会が行われることになっていた。伸一は、「教育・家庭の年」である今年…

小説「新・人間革命」 人間教育32 3月24日

山本伸一は、初の青年教育者大会には、ぜひとも出席し、心から祝福し、励ましを送りたかった。 しかし、大会当日の三月二十九日は、環境問題の世界的権威で西ドイツのボン大学名誉教授である、ゲルハルト・オルショビー博士や、ウガンダの駐日臨時代理大使夫…

小説「新・人間革命」 人間教育31 3月23日

教育部の人間教育運動の、推進力となってきたのは、青年教育者たちであった。 教員の世界では、経験年数がものをいい、若い教師が、ベテランの教師と自由に意見を交換したり、一つの物事の責任を全面的に任されることは少なかった。 だからこそ、学会の教育…

小説「新・人間革命」 人間教育30 3月22日

山本伸一は、「教育・家庭の年」の出発にあたって、教学理論誌『大白蓮華』一月号に、「教育」と題する詩を発表した。 教育部員や父母はもとより、人間を育成しようとする、すべての人たちに指針を示し、励ましを送りたかったのである。そこに、こう詠った。…

小説「新・人間革命」 人間教育29 3月21日

教育部のメンバーは、三項目にわたる人間形成の目標が定まると、その目標を実現するための、教育者の実践原則の検討に入った。 やがて、それも、まとまっていった。 一、生命の尊厳を基本原則とした教育であること。 二、人間の多様な可能性に対する信頼を基…

小説「新・人間革命」 人間教育28 3月19日

教育を蘇生させるには、もちろん制度的な問題の解決も重要である。しかし、一切の根本となるのは、教育の実質的な主体者であり、推進者である、教師自身の人間的成長を図っていくことである。 学校教育では、教師こそが子どもたちの最大の教育環境であり、教…

小説「新・人間革命」 人間教育27 3月18日

教育部の有志たちは、混迷する教育界にあって、未来建設の曙光を注ごうと、人間教育の研究に力を注いだ。 牧口常三郎の創価教育学説や、戸田城聖の教育実践、教育に関する山本伸一の提言などを学び、意見交換を重ねた。 メンバーの胸には、“新しい教育理念を…

小説「新・人間革命」 人間教育26 3月17日

萩野悦正に限らず教育部員は、職場で、地域で、体当たりするかのように、人間教育運動を展開していった。そのなかで、自分たちの運動の具体的な理念を、社会に明示していくことの必要性を感じていた。 教育部が、地域貢献への取り組みを開始した一九七三年(…

小説「新・人間革命」 人間教育25 3月16日

二月の中学入試を迎えた。萩野悦正のクラスの子どもたちは、短期間だが、真剣勝負で勉強に励み、いかんなく力を発揮した。 数日後、合格の報が次々に入った。私立中学に八人が受験し、七人が合格したのだ。毎年、一、二人しか合格者のいなかった学校にとって…

小説「新・人間革命」 人間教育24 3月15日

どうすれば、児童のエネルギーを、正しく発散させられるか――萩野悦正は考えた。 そして、休み時間と放課後を使って、徹底してドッジボールをさせた。男女の対抗意識が強いことを利用し、男女に分け、闘魂をぶつけ合わせた。 児童のエネルギーは、次第にドッ…

小説「新・人間革命」 人間教育23 3月14日

一九六七年(昭和四十二年)、萩野悦正は、念願の教員となった。 二度目に赴任した都心の小学校で、六年生を担任した。一クラスしかなく、児童は二十人である。低学年の時から、「手がつけられない」と言われてきたクラスだった。 花壇の土を屋上から商店に…

小説「新・人間革命」 人間教育22 3月12日

萩野悦正は、「母親教室」を開催しようと決断したものの、“どうやって地域に呼びかけるか”“会場は、どこにすればよいのか”“内容は、どうすればよいのか”など、戸惑うことだらけであった。 最初は、ポスターやチラシを作るのも、それを貼ったり、配ったりする…

小説「新・人間革命」 人間教育21 3月11日

躾など、子どもの人間形成の基盤は、家庭にある。学校に通うようになってからも、子どもは、家にいる時間の方がはるかに長い。 したがって、「家庭で、どのような教育がなされているか」「父親や母親が、いかなる教育観、家庭観をもって、子どもと接している…

小説「新・人間革命」 人間教育20 3月10日

教育部有志による、地域、社会での人間教育運動は、多彩に展開されていった。 ――学校の授業についていけない子どももいる。しかし、ほんの少しの配慮があれば、理解でき、伸びていく子は少なくない。 そうした観点から、土曜、日曜を使って、学校の授業が理…

小説「新・人間革命」 人間教育19 3月9日

教育部有志によって始まった教育相談室も、社会貢献の大きな実績をあげていった。 この教育相談室は、一九六八年(昭和四十三年)九月、山本伸一が教育部の代表らと懇談した折、特別支援教育に携わる杉森重代という女性教育者に、「その経験と力を、地域、社…

小説「新・人間革命」 人間教育18 3月8日

「人間教育」を叫ぶ、一九七一年(昭和四十六年)年頭の山本伸一のメッセージに、教育部は、勇んで立ち上がった。 そして、八月二日、教育部は、牧口常三郎の生誕百年と結成十周年を記念する第七回総会を開催し、「人間教育の実践」への、新たなスタートを切…

小説「新・人間革命」 人間教育17 3月7日

山本伸一は、メッセージのなかで、現状の教育の問題点を、鋭く指摘していった。 「教育の挫折は、文明の崩壊であり、はたまた、人間自身の敗北につながります。現代の多くの指導者は、未来をいかに築き、何を与えていくかという大局観に乏しく、目前の利害、…

小説「新・人間革命」 人間教育16 3月5日

教育には、教育理念が必要である。二十一世紀の建設のためには、国家や民族の枠を超え、生命の尊厳観に立脚した、 世界市民としての新しいモラル、新しい教育理念が確立されなくてはならない。それがあってこそ、教育の大道は開かれるのである。 法華経には…

小説「新・人間革命」 人間教育15 3月4日

山本伸一は、創価学園生との懇談に続いて、第一回となる東京教育部の勤行集会に出席しようと思っていた。 現代の教育の問題点を考えるにつけ、教育部の使命が、いかに大きく、重いかを痛感していたからである。 教育部が誕生したのは、伸一の会長就任一周年…

小説「新・人間革命」 人間教育14 3月3日

「幸福が人生の目的であり、従って教育の目的でなければならぬ」(注) 創価教育の父・牧口常三郎の叫びである。 子どもが幸福になるための教育――そこにこそ、教育の根本目的がある。 一九七七年(昭和五十二年)二月六日夕刻、山本伸一は、東京・信濃町のレ…

小説「新・人間革命」 人間教育13 3月2日

山本伸一は、語るにつれて、言葉に力がこもっていった。 「学会の組織はなんのためにあるのか。広宣流布のためであり、それは、皆さんに功徳を受けてもらい、幸せになってもらうことが目的です。 そのための学会活動です。これが一切の根本であることを忘れ…

小説「新・人間革命」 人間教育12 3月1日

二月の初旬、山本伸一は、自分に代わって大ブロック幹部の勤行会を担当する、理事長、副会長ら最高幹部と懇談した。 この時、大ブロックを、いかにして強化するかが話題になった。 伸一は、待っていたかのように語り始めた。 「最も重要なことは、幹部同士の…

小説「新・人間革命」 人間教育11 2月27日

山本伸一の、各部大ブロック幹部の勤行会への出席は、壮年部、男子部と続いていった。そして、その流れは、三月に入ると、ブロック幹部の勤行会へとなっていくのである。 学会の組織を堅固にしていくための伸一の照準は、第一線組織に合わせられていた。 広…