小説「新・人間革命」 共鳴音31  6月24日

山本伸一は、言葉をついだ。

 「グループの名前は、初夏を彩る、美しいマロニエの花にちなみ、マロニエ・グループにしたいと思いますが、いかがでしょうか」

 歓声があがった。皆、大賛成であった。

 「それでは、マロニエ・グループにさせていただきます。

 白い帽子と仕事着を身につけて、さっそうと作業に励む皆さんの姿は、白いマロニエの花を思わせます。さらに、この花のように清らかな信心を貫き通していただきたいとの思いを込めて、命名いたしました。

 また、パリの街は、マロニエの街路樹で有名ですが、この名前には、皆さんがパリを、フランス社会を代表するような、信頼の柱ともいうべき存在になっていただきたいとの願いを託しました。

 このマロニエ・グループは、自分自身を磨き、鍛えるマロニエ大学、人間大学であると思ってください。

 人生は挑戦です。努力です。勉強です。工夫です。その積み重ねのなかに勝利があります」

 伸一は、友を励ますために、一瞬一瞬、真剣勝負で臨んでいた。

 彼は、束の間の出会いでも、生涯にわたる誓いの種を植えようと、全生命を注ぐ思いで激励にあたった。

 誓いは、大成の原動力になるからだ。

 「励ます」の「励」という字は「万」と「力」からなっている。全力を尽くしてこそ、真の励ましなのだ。

 一度の励ましが生命を触発し、勇気をわかせ、人生を飛翔させる大力をもたらすこともある。

 伸一の日々は、果てることなき渾身の激励行であった。

    

 この五月十六日の夜、パリの凱旋門近くにある文化ホール「サル・プレイエル」で、十六カ国三千人のメンバーが集って、欧州友好祭が晴れやかに行われた。

 イギリスから、西ドイツ(当時)から、スイスから、イタリアから……続々とメンバーが集ってきた。大西洋に浮かぶ、スペイン領のカナリア諸島から参加した人たちもいた。

 伸一にとって、各国で奮闘するメンバーと会えることは、何よりも嬉しかった。それが最高の喜びであった。